MIYAMA’s STORY
- 久次郎 -

谷口隆一&さよこさんご夫妻

Interviewee: 谷口隆一&さよこさんご夫妻

山のある生活や、山の魅力を多くの方に知ってもらいたいという想いから生まれた「みやまのものがたり」。
事業者紹介第3弾は、米原市大久保を拠点に「伊吹山麓元気農業協議会」や「いぶきファーム」、食品加工場&そば処「久次郎」、民泊施設「大門坂荘」などを運営する谷口隆一&さよこさんご夫妻にお話を伺いました。

「伝統の農作物を育て、地域を守りたい。」仲間とともに栽培スタート。

今から約5年前。
当時、米原市の職員だった谷口さんは、「地域の農作放棄地や、荒地を利用して伝統の農作物を育て、地域を守りたい」という思いから市役所を早期退職。
仲間とともに「伊吹山麓元気農業協議会」や「いぶきファーム」を発足して、地域の伝統野菜である「伊吹大根」の復活栽培を始めます。

伊吹大根の栽培地は、車でたどり着くのも困難な山岳地にあり、朝、農作業に行くと鹿や猪が獣害対策の檻に突っ込んでいるようなこともしばしば。
わざわざこのような厳しい環境で伊吹大根の栽培をしなければならないのには、伊吹大根独特の味を保つために必要なことだと谷口さんは言います。


「伊吹大根の栽培はこのくらいの高地でないと本物の辛さがでない。
(高度の)低い土地で栽培をするとどうしても辛味が弱くなる。
煮物やお漬物に使うものは、(高度の)低い土地で栽培した大根でも良いけど、
大根おろしや蕎麦の薬味として本物の辛さとうまさを味わってもらおうと思うと、この高さと気温差が必要やなぁ。」

本物の辛さを持つ伊吹大根の栽培を、限られた山岳地で始めて数年後。
奥様の協力を得ながら、お漬物などの商品化を進め、認知度を高めたこともあり、ついに「天領伊吹大根」としてブランド化に成功。
加工品はもちろん、様々な飲食店で提供されるようになります。

念願だった、伊吹山の恵み「伊吹そば」の栽培と商品開発へ。

次にスタートさせたのは、事業を始めた時からの念願だった一つ・伊吹山の恵み「伊吹そば」の商品開発とそば栽培。
「小粒で甘みがある伊吹そばは本当に美味しい。
なのでそばを麺にしたときに、そばの旨みを最大限に引き出せる「そば打ち」の技術がどうしても必要で、全国の製麺所にそば粉を送り試作してもらった。」
そして最終的にたどり着いたのは、他を圧倒する大型で精密な機械を持つ四国の製麺業者。
そばの風味を損なうことなく麺に変えてくれる製麺所との出会いが、現在の人気商品の「久次郎の伊吹そば」を生み出します。


1300年以上昔から、伊吹山一帯、真言宗の修行僧が多く住んでいた霊山で当時は大きなお寺が4つもあったそう。
「日本最古のそば栽培の地」という記録が残っているのも、いぶき大根のような固有種の大根が栽培されていたのも、
元々は修行僧たちが自分たちの食事のために栽培を始めたのではないかと考えられています。

「そば栽培はその後も小さな規模で続けられていた。琵琶湖がある滋賀県の肥沃な土壌は、お米の栽培にも適していた。
現在そばの産地として有名な長野県や福井県のように大々的に広がることはなかったのは、みんな米作りに変わっていったからじゃないかと思う。」


自社での商品化はなんとか進んだものの、地域の特産品である「伊吹そば」全体のブランド化にはまだまだ時間のかかる状況。
伊吹そばの栽培は、多くの組合で独自に実施していたため、「伊吹そばの全体ブランド化」という思いは共有もできておらず、足並みも揃っていませんでした。
そこで、共通の目標として上がったのが「GI認定」の取得。

※GI認定とは・・・農林水産省が実施する地理的表示(GI)保護制度。
出展・・・農林水産省ホームページ http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/

GI認定を取得して、「伊吹そば」そのものを全国に通じるブランドそばにしよう!という目標のもと「伊吹そば」の生産組合が集まり、滋賀県では2例目、蕎麦としても全国で2例目となるGI認定取得へ向けての活動が始まり、現在でも続けられています。

特産品の加工場に伊吹そば専門の蕎麦屋を併設した「久次郎」をオープン。


いぶき大根や伊吹そばの栽培や商品化と並行して、谷口さんは特産品の加工場に伊吹そば専門の蕎麦屋を併設した「久次郎」を退職金をつぎ込んで開店します。
平日は加工場として様々な商品を生産し、土日は蕎麦屋として運営する「久次郎」は、大久保地域に久しぶりにできた飲食店。
自然と地域住民が顔をあわせるコミュニケーションの場所としても利用されるようになります。
「久次郎」が完成してしばらくして、女将さんのさよこさんが仕事を辞め本格的に参加することになります。

「久次郎ができてから、たまに遊びに来るようになったんですけど、後片付けがしっかりできていなかったり、掃除が行き届いていなかったりして。
そんな細かなところがどうしても気になって(笑)。
いい作物がとれ、いい環境があるので、この場所をもっと綺麗に保ちたいと思ったのが久次郎へ参加するきっかけです。」

本格参加したさよこさんは掃除はもちろん、商品開発にも力を入れていきます。
初めに手がけたのはお漬物や地元のお味噌の商品化。
昔から「お漬物作りは体で思えるもの!」と言われ、塩加減など経験値に頼っていたところを順に数値化して味を均一化していきました。
そのおかげもあって、今では漬物だけでも、いぶき大根ぬか漬け・甘酢漬け・みょうがの甘酢漬け、他にもさんしょ味噌など約8種類に増えて人気商品となっています。

そのほかにも「よもぎ餅」や、「よもぎプリン」など女性目線で甘味の開発をおこない、
冬は味噌の仕込み、春夏は惣菜作りや山菜を塩漬けして年中供給できるようにするなど、年中忙しく久次郎を支えています。

「主人(谷口さん)は常に事後報告。「今度こんなことやるから。」って後で聞かされるんです。
でも常に新しいことを考えているので、まぁそれもいいかなぁって(笑)」
やはり、成功の鍵はおかみさんが握っているようです。

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